自作界においてのAtom系プラットホームの魅力といえば、低価格・低発熱・低消費電力・省スペースあたりになると思います。
逆に弱点といえば性能・機能・拡張性あたりでしょうか。
最近、Skype映像通話専用マシンとしてD945GCLF2を使ったマシンを組み立て使ってました。
完全にSkype専用として使うには十分な性能を発揮してくれていたのですが、いくら専用といってもブラウザの一つやExplorerの一つくらいは同時に開くもので、その場合のレスポンスにストレスを感じていました。
またCPUに負荷がかかってるとAeroの描画もなんか引っかかりがあるというか遅い気がしていました。
そこでAtom系プラットホームと同程度の消費電力でより性能のいい構成ができないか考えてみました。
まずAMD系を調べてみたのですが、ソケットAM3用のCPU(45nm狙い)に対応したMini-ITXマザーが見つけられなかった(まだ市場に出てない?)のと、今回の構成を考えた1週間ほど前にAMD系でミドルクラスのPCを1台組んだばっかりだったのでAMDは除外することに。
次にCeleron E3200の消費電力が低いという噂を思い出して調べてみると・・・凄いっスねコレ(汗
2.4GHzでFSBは800Mhz、2次キャッシュは1MBでVT対応。しかも価格は4,500円前後という。
以前はハイエンド指向で最近は低価格・低消費電力も気になってはいたのですが、ちょうどAtomが出たタイミングと重なったこともあり、今までCeleronに注目してませんでした。
ということでCPUはE3200で決定。
後からVIA系という選択肢もあったなと思い出しましたが、
何年も前からVIA系は追ってないのでまぁいいやと。
E3200だとTDP 65Wという表記が気になるのとAtom330に+αするぐらいの性能があればいいので
2.4GHzから1.6GHzにアンダークロック(以降UC)して使うことにしました。
次にマザーをどれにするか考えました。
Windows 7でAeroを使うので、それなりにグラフィックの能力がある物を使いたいと考えていたので、あまり細かく考えずにNVIDIA系で安い物という基準でManliのM-N9300WF-Iをチョイス。
Manliって何?www と思いましたがZOTACの例のマザーのOEM先という噂があったのでもし本当なら品質に大きな差はないはずという目論見で買ってみました。
実は元々D945GCLF2を入れていたケースはNoah800であり、マザーやCPUは物理的にちゃんと収まるのか(特にヒートシンク)とか電源容量は足りるか(Noah800は80W)と心配してましたが、結論から言うと、スペース的な問題はなく、電源容量も一応大丈夫でした。
一応というのは、後の測定結果を見て貰うと分かるのですが、E3200をUCすればトータルの消費電力は80Wに余裕で収まってるのですが、いくつか不安定な点があり、その原因の一つに電源の貧弱さがあるのではないかと少々疑念を持ったためです。
他の電源で試せば良いのですがめんどくさいのでやってません。
以前の構成と今回の構成は以下の通り。
CPU | Celeron E3200(1.6GHz) | Atom330(1.6GHz) |
---|---|---|
Motherboard | Manli M-N9300WF-I | Intel D945GCLF2 |
Chipset | MCP79(Geforce 9300) | 945GC+ICH7 |
Graphics | Geforce 9300 | GMA 950 |
Memory | PQI DDR2-800(533Mhz駆動) 1GB x 1 | |
SSD | OCZSSD2-2C30G | |
OS | Windows 7 Ultimate x64 |
以降の消費電力はSANWA SUPPLY ワットチェッカーPlus(TAP-TST7)で計測。
グラフィックスメモリの割り当ては双方デフォルトのままです(多分双方128MB)。
1.OS起動
E3200 | Atom330 | |
秒数 | 72秒 | 69秒 |
消費電力ピーク | 50W | 41W |
※秒数はスイッチONからマウスカーソルの砂時計が消えるまで。(自動ログイン設定)
秒数は起動する毎に変わったりするので参考程度に。
体感としてはデスクトップが表示されてまだSSDの読み込みが続いてる間のレスポンスはE3200が良いです。
ここで最初に消費電力を測ったわけですが、E3200の構成がAtom330の構成の+9Wで収まってるのは凄いと思いました。
2.アイドル時
E3200 | Atom330 | |
最低消費電力 | 29W | 33W |
まさかアイドル時にE3200の構成が下回るとは思いませんでした。凄い。
945GCが電気食い過ぎってことですかね。
3.Skype映像通話
E3200 | Atom330 | |
CPU使用率 | 50〜60% | 70〜80% |
消費電力ピーク | 48W | 40W |
※CPU使用率はタスクマネージャで測定。随時変動するのでだいたいの値です。
さすが同じ1.6GHzでもE3200の方が余裕があるようです。
4.HDBENCH v3.30
E3200 | Atom330 | |
ベンチ結果 | ※1 | ※2 |
消費電力ピーク | 50W | 41W |
※1(クリックで表示) | ※2(クリックで表示) |
---|---|
@oem4.inf,%nvstor_desc%;NVIDIA nForce Serial ATA Controller ALL Integer Float MemoryR MemoryW MemoryRW DirectDraw Rectangle Text Ellipse BitBlt Read Write Copy Drive |
ALL Integer Float MemoryR MemoryW MemoryRW DirectDraw Rectangle Text Ellipse BitBlt Read Write Copy Drive |
CPU・メモリ・グラフィック共にE3200の構成が完全に上回ってます。
一方SSDへのアクセスはCopy以外はAtom330の構成の方が早いようです。
5.CrystalMark 2004R3
E3200 | Atom330 | |
ベンチ結果 | ※3 | ※4 |
消費電力ピーク | 54W | 42W |
※3(クリックで表示) | ※4(クリックで表示) |
---|---|
—————————————————————————— CrystalMark : 75005 [ ALU ] 15640 —————————————————————————— Current Original L1 I-Cache : 32 KB |
—————————————————————————— CrystalMark : 47108 [ ALU ] 9839 —————————————————————————— L1 I-Cache : 32 KB |
大体HDBENCHと同じ傾向が出ています。
E3200の構成の方はAtom330の構成の、ALUで約1.5倍・FPUで約1.7倍・MEMで約1.9倍・GDIで約3.1倍・D2Dで約4.1倍・OGLで約25倍のスコアをたたき出しています。
一方HDDは約0.8倍にとどまっています。
不思議なのはALUのEratosthenesでE3200の方が約0.9倍程度と微妙にスコアが低い点です。
もしかしたら疑似4コアが有効に使われたのか、キャッシュのみのスピードはAtom330の方が微妙に早いのかもしれません。
6.まとめ
ベンチの結果と消費電力の関係を見ると、E3200の構成のワットあたりの性能はAtom330の構成を上回ってるように思えます。
また、今回は条件をなるべく揃えるために敢えてメモリは一本しか使ってませんが、E3200の構成の方はメモリを2本挿し、デュアルチャンネルを狙うことも出来ます。
さらにE3200はVTに対応してるのでXPモードなども使うことができます。
騒音という点でもAtom330のチップセット用の4cmファンよりもE3200のリテールファンの方が静かです。
温度の計測はSpeedFanで適当にチラ見しただけなので具体的な数値は書いてませんが、同じ条件ならE3200の構成のCPU温度・GPU温度ともAtom330のチップセット温度の-10度くらいになるようです。
E3200の構成はすばらしいという結論を出したいところですが、先にも少し書いた通り今回の構成では少し不安定な部分が見受けられます。
具体的には、何かの拍子にBIOSのPOST画面が飛ばされるようになってしまいそれ以降CMOSクリアするまでBIOSの設定画面に入れなくなる(OSは起動する)とか、Windows7の起動途中で画面がブラックアウトしたまま延々とようこそ画面が表示されない(HDDアクセスランプの様子からOSは動いてはいる様子)とか、Windows 7を使ってる途中でフリーズする(BSoDにもならずいきなり画面が固まる)という事を経験しました。
POST画面が出なくなる問題は、BIOSの設定を変えたタイミングで次回の起動から発症したりしなかったりするのですが、BIOSの設定を変える際に最後にCPUのVTの設定を変えてセーブすると回避できるようです。
ただ、その際はPOST画面が出る代わりに、毎回CPU has changedのメッセージが出てPOST画面より先に進むためにF1キーを押す必要があります。
ようこそ画面が表示されない問題は、BIOSで内蔵GPUのクロックを下げた事をきっかけに発症したような気がします。
ただ、CMOSクリアをしたりGPUのクロックを元に戻しても直らず、それから数時間放置したあとに試したら直っていました。
ようこそ画面が表示されないといってもセーフモードやCDから起動した場合は画面は表示されていました。
Windows7利用中にフリーズした問題は、Skypeの映像通話とソリティアをしながらXPモードを使ってた(といっても仮想XPを起動してるだけ)ときに発生しました。
強制的に電源を落として再び起動したら何の問題もなかったかのように普通に起動しました。
もしかしたらSSDのプチフリーズが原因かもしれません。
フリーズの発生はまだ1度だけです。
この一連の問題の原因が、Manliクオリティにあるのか、初期不良にあるのか、うちの環境にあるのかは、ちゃんと調べてないので分かりませんが、Noah800付属の80W電源に問題があるような気がしています。
もっと電源に余裕のあるMini-ITXケースを手に入れる機会があったら試してみたいと思います。
ただ今回の構成はあまり長く使わない気がします。
Inspiron zino HDが日本で発売されるようになって消費電力が低そうならそっちに乗り換えるかもしれません。
以下2009/12/13追記
ケースをNoah800からKT-ITX01に替えてみました。
これにより電源が80Wから150Wに上がり、PCの動作も安定してるようです。
あとInspiron zino HDですが、正直失望しました。
米国Dellではもっと性能の低い構成を$229から買えるのに、日本Dellでは49,980円からです。
米国Dellでも日本Dellの最小構成にできるだけ合わせるとだいたい同じ金額になるので特に日本Dellが高いわけではないですが・・・
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